柚葉のゆっくり茶番劇、商標登録で炎上問題を考察する。

コラム

今回の柚葉ゆっくり茶番劇事件について調べた限りでざっくりと解説します。

なぜ商標登録の出願から登録までこんなに時間がかかるのか

それは出願件数が増えているからです。10年前は3、4ヶ月で登録されたのですが今は半年から1年かかるのが普通です。

なぜ出願件数が増えているのか?それはインターネットの普及に伴い商標に関する問題や訴訟がクローズアップされるようになったからと考えられます。

阪神優勝事件

昔、阪神が奇跡の優勝をした時に、阪神球団が阪神優勝という言葉を使えなかったという事件がありましたね。これは一般の男性が事前に阪神優勝という商標を登録していたためです。この男性は阪神球団とは全く関係がなく悪意をもって登録したことが明らかでした。

それにもかかわらず阪神球団は阪神優勝という言葉を使うためにこの男性と交渉しなければいけなかったのです。

八丁味噌事件

似たような事件で八丁味噌事件というのがありました。八丁味噌とはなんでしょうか?
それは愛知県岡崎市八帖町で伝統的に作られてきた味噌という意味です。だれかが開発した特別な味噌というわけではなくその地域では一般的に使用されていた名称です。現に愛知には〇〇八丁味噌という会社がたくさんあります。

そのなかである会社が〇〇八丁味噌という会社名を商標登録しようとしました。この〇〇の部分が合資会社で、合資会社八丁味噌という言葉を商標登録しようとしたのです。
これに異議をとなえたのが、もともと八丁味噌を作っていた会社たちです。
合資会社という普通名詞に、地域で伝統的に使われていた八丁味噌というキーワードをくっつけただけで、商標の条件を満たさないという主張です。

この主張が認められ合資会社八丁味噌っていう商標登録が却下されました。

このような事件もあり、多くの方が商標登録とその問題を知るようになりました。

言い換えるとこれを悪用して金儲けをしてやろうという人たちも増えてきたのです。
さらにそういう人たちに先を越されないように商標登録をしようとする人たちも増えるのです。結果的に商標登録の申請ケースが増えすぎてこんなに待ち時間が長くなってしまいました。

弁理士に責任はあるのか?

今回、弁理士さんの責任を追及する声もあがっていますが、結論を言えば責任を問われることはありません 。もちろん社会的な信用の失墜はありますが、刑事罰だったり弁理士会から罰則を受けることはありません。

弁理士に権限はあるのか?

弁理士と弁護士で似てますよね。私も最初の感覚では弁護士と同様に国から与えられた特別な権限があるのではないかと思っていました。」しかし弁理士ができることはあくまでも代理に過ぎず、お金をもらって特許申請だったり実用新案の申請ができるというだけです。書類さえ揃えれば個人で申請しても問題ないのです。

弁護士が持つ特別な権限

一方、弁護士に与えられた特別な権限とは何でしょう。例えば調査権があります。自治体とか会社に対して裁判で必要な情報を開示するよう求めることができます。具体的に言うと他人の戸籍謄本を見ることができます。本来戸籍は自分のものしか見れませんが弁護士は業務上必要であれば見ることができます。

法律系の資格はざっくり言うと2種類あります。別に素人が個人で行ってもいいんだけどお金をもらってその仕事をするにはその資格が必要というもの その資格を持ってる人だけに許された権限がある

前者が税理士、行政書士、弁理士ですね。後者が弁護士になります

ということで今回、柚葉さんの代理人になった弁理士さんはあくまでも柚葉さんの申請を手伝っただけで、罪に問われることはありません。
仮に問われるとしたら柚葉さんからです。「あんたが大丈夫って言ったから申請したのに、こんな事になってしまった。賠償金払え」が関の山です。

商標制度が時代とズレてきた

ここまで見てきて、どうも商標登録の制度、および弁理士の権限が時代とのズレが生じているようですね。

そもそも商標登録は消費者を保護するための制度です。

例えばコアラのマーチというお菓子がありますよね。こちらはロッテから発売されている有名なお菓子です。もし全く同じ名前で似たような外見で粗悪な商品が売られていたとして、皆様は区別がつきますか?

詳しく会社名とか見たら違うのでしょうが、パッと見が全く同じだったら、間違えて粗悪な方を買ってしまう人がいるかもしれません。そこで商標登録があればロッテはこの粗悪なコアラのマーチに対して名前を使うなと訴えることができるのです。

ですが、今回の柚葉さんを見てわかるとおり、彼に消費者保護の目的なんて一切ないですね。それなのに申請が通ってしまうという制度上の矛盾があります。

「弁理士に持ってった時点で弁理士が断ってくれればいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし、柚葉さんが粘って粘って弁理士に持っていきまくれば、どこかがやってくれるかもしれません。もっと言えば柚葉さんが自分で調べて自分で申請してもいいわけです。

商標問題の改善案

私が考える改善案として公的機関から独立した、商標登録に関する民間組織があると良いのではないかなと思います。例を挙げると ADR(裁判外紛争解決手続) です。こちらは弁護士などの法律家などが集まり、私人間の紛争を裁判を経ずに解決しようとする取り組みです。

裁判を起こすのは大変です。訴えた方も訴えられた方も経済的に非常に無駄なわけです。特に民事訴訟における賠償額は踏み倒すこともできまっす。結局は勝ち負けよりも双方が歩み寄って和解する方が得策です。そのためにも専門家が紛争の仲介をするという役割ですね。

そんな感じで弁理士を中心とした特許の専門家が集まって、公的な審査の前に1段階審査があれば良いのではないかと思います。そしてこの審査が通った案件は特許庁での審査も簡略化され、スムーズに登録されるという流れではいかがでしょうか?

こうやって特許庁の負担を減らしてあげることで、悪意のある申請を迅速に審査・却下できるようになるのではないかと思います。

まあ当然それをやるためには専門から余ってないといけないんですけどね。なのでいろんな分野で専門家が増えると世の中は円滑にまわっていくようになります。そのためには現在の専門家が自らの意見を手放す必要があるのですが・・・。